私が主宰している「くりこま高原自然学校」は、私が専門としてきた野外教育、冒険教育、環境教育を実践する、あくまでも民間の教育事業所です。1995年に会社を辞め、私費を投じて施設を建設し、1996年から栗駒山の中腹に拠点に青少年の自然体験や冒険体験を通じた教育活動を行ってきました。ちょうど自然学校を始めた1996年に文部大臣の諮問機関である、中央教育審議会で「生きる力」を育むことが重要だという答申が出されました。中央教育審議会の答申は日本の教育の方向性を示す、いわゆる国家教育のバイブルのようなもので、この答申に沿って、その後の学校現場に反映される学習指導要領なども検討されます。従って「生きる力」というキーワードは、ここ十数年の日本の教育には欠かせない言葉となっています。それでは、「生きる力」とは何なのか?この言葉を解説する文章は様々なところでされて、概ねこのような言葉で解説されています。
〝生きる力〟とは、いかに社会が変化しようと、
自分で課題を見つけ、自ら学び、自ら考え、主体的に判断し、行動し、
よりよく問題を解決する資質や能力であり、
また、自らを律しつつ、他人とともに協調し、
他人を思いやる心や感動する心など、豊かな人間性である、
たくましく生きるための健康や体力・・・。
さらに答申では、〝生きる力〟は体験によって育まれると指摘し、社会体験、生活体験、自然体験の体験が必要であると示していました。この答申を受け、文部省は1998年からは長期の自然体験の場を提供するために2週間以上の自然体験を実施しする〝長期子ども自然体験村〟を全国各地で展開をしました。くりこま高原自然学校は、初年度から文部省からの委嘱を受けこの事業に取り組みました。さらに、文部省はこのような自然体験の場を創ることができる指導者・人材を育成するために〝野外教育企画担当者セミナー〟を4年間に渡り全国で年間十数回も講習会も実施しました。実は、このセミナーの講師陣がそれまでノウハウを構築してきた民間事業者たちだったのです。その講師の一人に私も加わらせていただき、さらに、くりこま高原自然学校でもノウハウを構築してきました。
そして、くりこま高原自然学校もまさに自然体験や冒険体験を通じて、〝生きる力〟を育む教育活動を数多く企画し、その活動のノウハウ、指導のノウハウを構築してきたのです。
1999年当時の葛巻町教育委員会に勤務していた社会教育主事の吉田氏の依頼で、自然豊かな環境を活かして、葛巻町として自然体験指導者を養成したいと依頼があり、当時廃校になった上外川分校の校舎で数回にわたり、指導者講習会を実施した。そして、その講習生を指導者として活かして、文部省の委嘱事業「長期子ども自然体験村」を受ける提案をして始まったのが「スノーワンダーランド」なのです。当時全国で80個所の2週間以上の自然体験村が実施されましたが、ほとんどは夏休みの企画で、スノーワンダーランドが初めてで唯一の冬休みに実施された2週間のキャンプとなったのでした。
現在、くずまき高原牧場の職員の〝きむ〟こと木村氏はくりこま高原自然学校でのスタッフを経て「スノーワンダーランド」をはじめ、様々な体験教育事業を展開する要として活躍をしています。
この「くずまき高原牧場スノーワンダーランド」の2週間のキャンプは、くりこま高原自然学校の源流が流れて、子どもたちの生きる力を育むための体験の場を提供し、体験から学ぶという体験学習法をベースに指導をしています。あくまでも子どもたちが、自ら考え、判断し、行動する・・という場面を設定しているのです。
くりこま高原自然学校は、さらに長期寄宿の事業を併設し、不登校や引きこもり、ニートと呼ばれ、悩みを抱える青少年の支援もしています。「生きる力」を育むという命題に向き合っています。